解析・保存・検索をAIと回す、実際のワークフロー
Wiki化で記録の仕方が変わるのは分かった。では、実際の解析・保存・検索は、どんな場面でどう回っているのか。
- 可視化の相談から保存までが、どこまで自動化できているか
- 「探す」という作業そのものが要らなくなった理由
- 何を人間が確認し、何をAI任せにするかの線引き
可視化の相談から、そのまま保存まで
シミュレーション結果を可視化しながらいろいろ試すとき、以前は可視化スクリプトを書くこと自体が面倒だった。今は、作りたい図とデータをそのまま生成AIに渡している。
すると、いくつかの分析方法の提案が返ってくる。一からコードを書く必要はなく、提案された分析結果の図を見ながら、必要な結果を抽出していく。結論がまとまったら、そのままWikiに保存する。この過程で作った図(生成AIが書いたプログラムによって作られるため、作成コストはほぼゼロに近い)もWikiに一緒に置いておく。あとから結論と根拠になった図を並べて確認するのが、格段に楽になった。

「探す」という作業自体がなくなった
以前の最大の困りごとは、作った図やプログラムがどこかに行ってしまい、探すのに時間がかかることだった。Wiki化してからは、整理された場所に置かれているぶん単純に探しやすくなった。それだけでなく、もう一段階変化があった。生成AIに探してもらうこと自体が可能になったのだ。
過去に作った図、プログラム、結論を、自分の記憶を頼りに掘り返す代わりに、AIに聞けば引き出せる。「あの時のあの結果、どこだったか」を自分で覚えておく必要がなくなった。

記憶を頼りに掘り返す作業がまるごと要らなくなったのが、体感として一番大きい変化でした。探す時間が減ったというより、探すという発想自体をしなくなった感覚に近いです。
Wikiへの登録は、一律に自動化しているわけではない
ここで誤解されやすい点がある。AIに全部任せて自動で溜まっていく、というほど単純ではない。実際には、情報の重みに応じて確認するかどうかを使い分けている。
確認してから反映する:なぜその解釈をしたのか、次に何を試すべきか。判断が絡む結論は、内容を確認したうえでWikiに反映する。
確認せず自動追記する:単純な計算結果や表のような、機械的な情報の蓄積は、確認せずプログラム経由でそのまま追記することもある。
この使い分けが、実務上ちょうどいいバランスになっている。何でも人間が確認していては手間が増えるだけだし、何でも自動で流し込むと、間違った解釈がそのまま蓄積されるリスクがある。
実際、確認を省いて自動追記に任せた初期の運用では、AIが結果の傾向を早合点して要約し、その要約がそのままWikiに残ってしまったことがあった。原因は明確で、判断の伴う結論と機械的な数値の蓄積を同じ扱いにしていたことにある。それ以降、「解釈が入るかどうか」を確認要否の基準に据えるようになった。情報の性質によって自動化の度合いを変える、という粒度の調整が効いている。
この運用は、もう少し広い潮流の一形態でもある
この運用、つまりAIが情報の整理や図示、Wikiへの登録までを担い、人間はその重みに応じて確認するかどうかを判断するという分担は、最近「Agentic Knowledge Management」と呼ばれる、AIがナレッジベースに能動的に関わっていく次段階の運用モデルの一形態にあたるという見方があるらしい。難しい名前がついているが、実務としてやっていることは意外とシンプルだ。
前回記事「なぜ研究データは『あるのに使えない』のか」で触れた「AIが使える形で残す」という記録の切り替えは、確認・自動追記という運用の線引きがあって初めて実務として回るようになる。記録の仕方を変えるだけでは終わらず、その記録を誰がどう扱うかまで決めて、ようやく一つのワークフローになった。




まとめ
可視化の相談から保存、検索までを生成AIと一緒に回せるようになったのは、単に自動化を進めたからではない。何を確認し、何を任せるかという線引きを実務の中で作ったことが効いている。
このワークフローの効果が最も分かりやすく表れるのが、研究報告の資料作成だ。次回は、発表資料が指示するだけで出てくるようになった変化と、それを再現するための実践テンプレートを紹介する。


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